村上隆です。
カイカイキキギャラリーでは、今年二回目の私の版画展がスタートします。
今回のテーマは、ずばり「ジャポニズム」。ニューヨーク・ガゴシアンギャラリーでの個展『JAPONISME → Cognitive Revolution: Learning from Hiroshige』、これは私の2025年の勝負球であったのですが、そこで展示された絵画作品の、ほぼ全てを版画にした展覧会で、タイトルを日本語訳にすると、『ジャポニズム→認知革命・広重に学ぶ』です



芸術鑑賞において、今までとは全く違った概念と出会ったときに、何もかもが変わって認知されてしまい、その過激な出会いこそ、現代美術の存在理由です。
1870年代〜1900年頃にかけて、ヨーロッパにおいてジャポニズムという認知革命が起きました。そしてその事件こそ、まさに芸術世界における一大認知革命の瞬間であり、後の抽象画誕生までのトリガーを引き、現代美術発生起点そのものであったのではないか、という私の説を実証する展覧会でした。
そもそもは、ブルックリンミュージアムでの歌川広重展(2024年4月)のために、広重の浮世絵シリーズ「名所江戸百景」のオマージュ作品を作ってくれという、美術館からのオファーを受けたのが始まりでした。
作品を作り始め、広重とジャポニズムの関係性を考えているうちに「もしかしてジャポニズムというのは、もっと深いところで西洋美術史の中に潜り込み、それが今、完全に現在の美術そのものを形作っているのではないか?」というアイデアが生まれ、発見したのが、MoMAの初代館長アルフレッド・バーが発表した「CUBISM AND ABSTRACT ART」という、新印象主義からシュルレアリズムへの体系図でした。
それによると、そもそものシュルレアリズム、後に抽象画に発展する、そのムーブメントは、ジャポニズムから発生していると、その図に書き記されておりました。




現代においてのマンガ文化が世界を席巻している理由には、その荒唐無稽な、発想方法、思想、ストーリー、構図、絵の緻密さ等と共に、それらのアンサンブルが全てが抽象度の高いものであり、ユニバーサルな言語を持っているというところにあります。
ハリウッドの映画においては、西洋式の具体性、リアリティが重宝されて、宣伝力とともに全世界に流布されていましたが、現代においては、前述のアニメ新メソッドが席巻し始めています。
同じように、芸術もひたすら具象的かつ、ロジカルに展開していた西洋の美術が、浮世絵の発源、浮世絵を解釈しようとした瞬間から、解体せざるを得なくなったという歴史的な事実がありました。
そのことを発見し直して、改めて再提案をするという展覧会が、NYガゴシアンでの展覧会だったのです。
広重の模写を経てジャポニズムが生まれ、生まれたゴッホや、モネ、セザンヌ達のジャポニズム的なる作品を模倣しつつ、最終的には、そのジャポニズムが発祥したであろう瞬間に生まれたルイ・ヴィトンのモノグラム、つまりモノグラムを絵画として提示する私 の抽象芸術の出発点にして帰結点である作品を展開し、ニューヨークのアートシーンでの評価を得たと考えています。
2025年は、ルイ・ヴィトンとの二度目の大きなコラボレーションが行われた年であり、こういった回顧をするにはとてもいい機会だと思えたので行いました。



その展覧会の作品のほぼ全て版画にして展示する今回の展覧会。
原画は、すでにいろんなところに旅立っていったので、版画によって全作品を再び一堂に会する本展は、ジャポニズムの影響の大きさを再検証できる重要なものでしょう。そういった野心的な版画展、是非皆さんお越しください。


開催概要
村上隆エディション展
「JAPONISME → Cognitive Revolution: Learning from Hiroshige」
会期: 2025年12月19日(金)~1月29日(木)
開廊時間: 11:00~19:00
休廊: 日曜、月曜、年末年始(2025年12月27日~2026年1月5日)
場所: 〒106-0046東京都港区元麻布2-3-30
元麻布クレストビルB1F
【販売に関する注意事項】
(1) 当日混雑時は整理券を配布いたします。
(2)作品の梱包は、1枚ずつ状態を確認し、丁寧に行っておりますが、開封後の折れや色あせ、凹み、シミ、破れ、その他の損傷や紛失については保証いたしませんので、取り扱いには十分にご注意ください。
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